<交代浴 contrast bath, Wechselbad>
歴 史:
風呂の歴史は紀元前2,500年頃のインダス文明に遡ります。中央アジアで発生した風呂?とは、熱した石に水をかけて発生した熱い蒸気を浴びるという蒸気浴でした。これがインドに伝わり仏教とともに日本に伝来し、竈風呂として広がりました。大和朝廷~奈良時代の頃といわれています。現代のような温水浴の形になるのはもっと後です。一方、中央アジアから欧州へ伝わりローマ風呂に、そしてローマから北欧に伝わりフィンランドでサウナ風呂に、それぞれ発展しました。
サウナは乾式(熱気浴)と湿式(蒸気浴)があり、いずれも海や雪を利用した冷水浴と組み合わせた交代浴(温冷交代浴)として利用されました。10分間ほど約100℃のサウナに入り、その後、2-3分間、約10℃の海水、湖水または0℃以下の雪の中に入りました。
現 況:
サウナが日本に輸入されたのは1950年代ですが、冷水浴が省略されて、温泉浴室などの片隅に設置された蒸気浴・熱気浴として普及しました。その後、スポーツ医学の分野からもアスリートの運動能力や疲労回復などに有用であるという報告が多数みられるようになりました。このようにサウナの一部としての交代浴とアスリートのトレーニングとしての交代浴がそれぞれ独自に発展してきました。プロトコールも様々ありますが、一般的には90℃~100℃のサウナまたは40~42℃の温水に8~10分ほど入り、その後12~15℃の冷水に2~3分間入ります。これを3回繰り返します、つまり、温→冷→温、です。最近では、全身浴槽内で38~47℃の温水と13~22℃の冷水を交互に噴出させ体表面を刺激する交代圧注浴や、足浴のみの交代足浴も行われています。
効 能:
医学的には、温熱と冷却による血管拡張と収縮、交感神経緊張と副交感神経緊張が反復され、血液循環、新陳代謝、老廃物排出、自律神経の正常化、内分泌機能の調整などの効果があります。他にも温水浴の作用には、筋緊張の緩和(神経γ線維の閾値の調整)、靭帯や腱の柔軟化(コラーゲン線維の三重ラセン間結合の緩和)、静脈還流の増加(HANP、利尿ペプチドの産生増大)、末梢血管抵抗の低下(前毛細管括約筋の弛緩)などがあり、これらが緩急つけて生体に作用しますので、温水(温熱と静水圧)の作用を増大させます。緩急つけて温水効果と冷却効果が及びますので、生体への負荷は大きく心疾患や高血圧などには適していません。医師の管理下で行ってください。乱暴に言うと、一定速度で水を流すよりも緩急つけて流した方が流れ(血液循環)は良くなり汚れ(疲労物質)も落ちるようになるという理屈です。
適 応:
科学的証拠のある適応疾患は、
心不全、
閉塞性動脈硬化症
複合性局所疼痛症候群(CRPS)、など
運動生理学分野からの科学的適応は、
筋肉痛、
疲労回復、
不眠、冷え性、など