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B.化学作用
a) 血管拡張
★血圧を下げ,心臓の負担を減らします
化学作用こそ温泉の本質で、泉質ごとに異なった作用があります。血管と皮膚に対する作用がはっきりしています。血管に対する作用は拡張作用です。ほとんどの物質は皮膚を貫通することはできませんが、温泉のなかの一部の物質(炭酸ガスCO2, 硫化水素ガスH2S など)は皮膚を 貫通して血管平滑筋に達します。血管平滑筋は低酸素状態となるため弛緩し、血管は拡張します。その結果、血液の循環がよくなり(血管抵抗が減少して血液が流れやすくなり、心臓のポンプとしての負担が軽減し)、血圧も低下します。この作用を持つ代表的な温泉は炭酸泉、硫化水素泉です。高血圧や慢性心不全の患者さんに効果的です。
温泉のこのような魅力あふれる未知の価値が総合的生体調整作用で、温泉療法の真髄と思います。 物理作用や化学作用は現代科学によって代用品がつくられていくかもしれませんが、 総合的生体調整作用は温泉地にしか存在しません。
D.草津温泉の効能
このように草津温泉を科学的に研究してみると、草津温泉の効能は以下のようになります。
1) 神経痛、筋肉痛、関節痛などの疼痛の緩和
(物理作用の温熱作用)
2) 傷、痔疾、アトピー性皮膚炎、乾癬、褥瘡
(化学作用の殺菌作用)
3) 疲労回復、健康増進
(総合的生体調整作用)
草津温泉水が有効である理由は、黄色ぶどう球菌に対する殺菌作用で、悪循環を断つことにあると考えられます。
さらにその殺菌作用をくわしく調べた結果、草津温泉水の殺菌作用は酸性(pH2.0)という条件で、マンガンイオンとヨウ素イオンの共同作用によることがわかりました。
この強い殺菌作用により痔疾や外傷にも効果があります。
乾癬(かんせん)については、草津温泉療法で83%で皮膚症状が改善しました。しかし、その理由は、色々と研究してみましたが、まだわかりません。
殺菌作用だけでなく、角化作用、保湿作用、肉芽形成作用もあり、褥瘡(床ずれ)の治療にも有効です。
c) 漂白作用-美人の湯
草津温泉は昔から漂白作用があると推定されていますが、その研究はまだ始まっていません。草津温泉の近くにある川中温泉は「日本三美人の湯」の一つとして知られています。泉質は弱アルカリ性(pH8.4)の石膏泉です。新しい分類では、カルシウム-硫酸塩温泉です。
漂白作用による効果ですので、美人の湯というよりは美肌の湯ということになります。
C.総合的生体調整作用
「温泉に行くと気分が落ち着き、体がすっきりする」というあいまいな作用を総合的生体調整作用と名づけて、その本質を明らかにしようと考えています。これまでの研究では、温泉を含めた自然環境などの総合作用で、日常生活で乱れた自律神経系、内分泌系、免疫系などを本来の生体リズムに整える作用と推定されます。
かつては転地療養と言われましたが、運動・物理・化学刺激や情動・ストレスなどが視床下部 Hypothalamus、脳下垂体 Pituitary gland、副腎皮質 Adrenal glandを介して生体を調節することが判明し、視床下部・脳下垂体・副腎皮質軸 HPA axisと言われています。
★最近の研究トピックス
温泉地で広い浴槽につかるとゆったりした気持になるのは、脳波のα波の増加によるという研究成績が示されています。
また温泉浴により免疫機能、内分泌機能、サイトカインなどが変動して、生体の諸機能が正常化あるいは強化されてくるという研究報告もあります。
森林浴や源泉からでるマイナスイオンやテルペン系炭化水素による免疫調節作用や鎮静作用も報告されています。
b) 殺菌作用
皮膚に対する作用は誰の目にも見えるだけにわかりやすいです。草津温泉は昔から、皮膚疾患によいと伝えられてきましたので、私たちもアトピー性皮膚炎、乾癬(かんせん)、褥瘡(じょくそう)という三つの皮膚疾患に対する作用を検討しました。
★アトピー性皮膚炎の悪循環を断つ
草津温泉療法によりアトピー性皮膚炎の81%で皮膚症状が改善しました。アトピー性皮膚炎の皮膚症状を悪くする原因の一つに黄色ぶどう球菌の感染があります。感染により皮膚症状は悪化し痒くなるので掻きます。掻くと皮膚は傷みさらに感染しやすくなります。アトピー性皮膚炎ではこのような悪循環があります。
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B 温泉療法 Balneotherapy
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