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18.どの温泉がいい?
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よくある質問TOP

             群馬県の郷土かるた「上毛かるた」より
<日帰り温泉について>

日帰り温泉施設の多くは非火山性温泉で、古代の海水に由来する塩化物泉が多いです。
火山性温泉よりも豊富な溶存物質を含む日帰り温泉施設もあります。
火山性温泉は酸性岩石を透過するため酸性泉が多いですが、非火山性温泉は重曹
(炭酸水素ナトリウム)を含むアルカリ泉もみられます。

平野部にある日帰り温泉(非火山性温泉)を火山性温泉と比較してみましょう。
 群馬県前橋の温泉ゆーゆは、溶存物質が4.288g/kgあります。
 埼玉県日高市のサイボク温泉は、溶存物質が6.972g/kgあります。
 埼玉県小川町の花和楽の湯は、pH 10.1の強アルカリ泉です。
 東京都の板橋前野温泉さやの湯22.140g/kg、北品川温泉天神湯1.292g/kgです。
温泉開発と化学成分の変化

 昔ながらの自然に湧出する温泉を自然湧出泉といい、掘削した温泉を掘削泉といいます。掘削泉には、自力で湧出する自噴泉と、動力で採取する動力泉があります。

 明治年代から掘削による温泉の開発が始まり、別府温泉が最初でした。1970年代には別府温泉(大分県)の塩素イオン(Cl-)濃度は800mg/kgほどありましたが、2000年代には200mg/kgとなっています。また伊香保温泉(群馬県)では、1930年代に塩素イオン(Cl-)濃度は138mg/kgほどありましたが、1960年代には105mg/kgとなっています。逆に鉄イオン(Fe2+)濃度は6.22mg/kgから18.65mg/kgに増加しています。動力による温泉の掘削・ボーリングで、温泉成分は変化していき、近隣の温泉地にも成分の変化をもたらします。

 1930年代の源泉数はわずか867でしたが、1989年には20,175に著しく増加しました。温泉の普及は大変うれしいことですが、源泉の成分変化は憂慮すべき問題と思います。かつての伝統的な分湯制度は閉鎖的であるといわれましたが、温泉資源を保護する重要な役割もありました。
温泉の誕生
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道案内温泉医学Home (表紙
  温泉医学index目次
   A 温泉研究 Balneology Research Page 1
     ① 温泉の科学     Page  2,  3,  4,  5,  6,  7,  8,  9,
     ② 温泉研究業績    Page 10, 11, 1213, 14, 15, 16, 17, 18,
                       19, 20, 2122, 23, 24, 2526, 27
     ③ 温泉学会の案内  Page 28, 29, 30,
     ④ 温泉療法医     Page 31
     ⑤ 温泉医学アルバム Page 32
   B 温泉療法 Balneotherapy     Page 33
     ① 温泉療法の実際  Page 34
     ② 安全入浴法     Page 35
     ③ 泉質について    Page 36
     ④ 美人の湯       Page 37
     ⑤ 言い伝え        Page 38
     ⑥ よくある質問     Page 39, 40, 41, 42, 43, 4445, 46, 47, 48,
       49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 6263, 64



 
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                 埼玉県日高市 サイボク温泉
18)どの温泉がいいのですか? 非火山性温泉・日帰り温泉は効くの?

わかりません。
私達は草津温泉について研究を長年やってきました。その結果から草津温泉は「薬の温泉(いでゆ)」であると自信を持って言えます。江戸時代の温泉番付で草津温泉が東の大関(当時は大関が最高位)とされていたことが科学的に証明できたといえます。
 しかし残念ながら他の温泉との比較は多くの制約があり、ほとんどやってきませんでした。温泉関連の学術雑誌をみてもやはり複数の温泉を比較している研究は希です。
 ひとつひとつの温泉はみな泉質が違うので効能も異なり適応症も異なりますので、比較すること自体が困難で意味をなさないのかもしれません。

別府、有馬、箱根、草津、登別、などのように知名度は高くないですが、温泉分析書を見ると、これらの名湯と同等またはそれ以上の泉質や成分を持つ温泉も多数あります。
  どうぞ皆様の足で名湯を探してください
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山間部にある火山性温泉名湯といわれている温泉と比較してみましょう。
 東の大関と言われる草津温泉の溶存物質は1.640g/kgです。
 西の大関と言われる有馬温泉の溶存物質は26.93g/kgです。
その他、温泉番付けの上位をみると、
東 方:
 那須1.150g/kg、伊香保1.36g/kg、湯河原2.126g/kg、蔵王2.933g/kg、
西 方:
 城之崎4.31g/kg、道後0.2684g/kg、霧島2.768g/kg、別府0.845g/kg、
となります。

参考までに、海水には約30g/kg、死海には約250g/kgの塩分が含まれます。
温泉ではありませんが、海水浴は皮膚疾患や呼吸器疾患などを改善します。

日帰り温泉のなかには、老舗の名湯を凌ぐほど豊富な溶存物質の温泉もあります。


「日帰り温泉はどうしてできるの?」

火山のない平野部に湧出する温泉を非火山性温泉と言い、深層地下水型温泉化石海水型温泉に大別されます。(Page 62 参照)

 天水(てんすい;雨、雪、雹などに由来する水)が地中に浸透し循環し、地熱に温められて地上に湧出します。これが深層地下水型温泉です。
 太古の海水が地殻変動などにより地中に閉じこめられ、化石海水と呼ばれています。これが地上に湧出してくるのが化石海水型温泉です。

地下では100mごとに温度が約2.5℃ずつ上昇します地下増温率)。
地表温度が0℃でも地下1000mでは25℃の水温となります。たとえ真水でも、地上に
湧出すると、温泉法では「25℃以上の湧出地下水」を満たす「温泉」と定義されます。

また海水由来の場合は多量の塩分を含んでいるので、温度上昇の少ない地下浅層部の
海水由来の水でも「溶存物質1g/kg以上」という温泉法の条件を満たして「温泉」と定義されます。

 平野部にある日帰り温泉施設地下1000~1500mほど掘削して、25℃以上の地下水を汲み上げています。温泉法に基づく立派な温泉です。

 草津温泉湯畑
  行司: 紀州龍神の湯、伊豆熱海の湯
      上州沢渡の湯、津軽大鰐の湯


江戸時代の最上位は大関でした、現在の横綱に相当します。
  東   西
 大関  上州草津湯 摂州有馬湯 
 関脇  野州那須湯  但馬城ノ崎湯
小結   信州諏訪湯 予州道後湯 
 前頭  豆州湯河原湯 加州山中湯 
 前頭  相州足の湯 肥後阿蘇湯 
 前頭  陸奥嶽の湯 豊後浜脇湯 
 前頭  上州湯川尾湯 肥前温泉湯 
 前頭  仙台成子湯 薩摩霧島湯 
 前頭  最上高湯ノ泉 豊後別府湯 
 前頭  武州小河原湯 肥後山家湯 
色々な方々が江戸時代の温泉番付をまねして温泉番付の現代版を出しています。それぞれの視点で判定していて、いずれも正論と思います。やはり「どの温泉がいいか?」の結論は永遠にでないでしょう。

江戸時代の温泉番付