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補足説明:

死腔:ガス交換に関与しない気道内の空間。
鼻から吸入した新鮮な空気は 鼻→喉頭→気管→気管支→細気管支→肺胞 へと入っていき、肺胞でガス交換が行われます。肺胞には毛細血管が接していて、毛細血管には体中の二酸化炭素が集められて来ています。酸素に富んだ肺胞の空気は二酸化炭素に富んだ毛細血管の血液とガス交換されます。
しかし肺胞以外の空気の通り道(気道)はガス交換をしていませんので、無駄な回路とも考えられますで、死腔(しくう)といいます。

閉塞性呼気障害:息を吐き出すのが困難な病態。
気管→気管支→細気管支→肺胞 という空気の通り道において、喀痰や気道収縮(炎症やアレルギーによる)などが「」のような作用を果たしてしまい、息は吸い込めるけど息を吐くときにこの「」が閉じてしまい息が吐き出せなくなる状態をさします。呼気障害末梢気道虚脱air trapping などともいいます。
気道に弱い気圧をかけておくと「弁」は完全には閉まらないので、なんとか息を吐き出すことができます。
閉塞性障害をきたす疾患をまとめて慢性閉塞性肺疾患または慢性閉塞性呼吸器疾患といい、肺気腫慢性気管支炎、(気管支喘息)などが含まれます。

過膨張:肺に空気がたまって出て行かないこと。
閉塞性の呼気障害では、息をうまく吐き出せませんので空気が肺にたまっていき、肺は膨らんでいきます。その結果、胸郭はふくらみ、ドーム状(上に凸)の横隔膜は平になり(上図参照)、呼吸運動が著しく制限されます。

★呼吸筋の訓練になる
 また水圧に抗して横隔膜による腹式呼吸をすれば立派な呼吸筋の負荷訓練になります。さらに水中に息を吐くようにすると、気道内圧は高まり、喘息や肺気腫などにみられる呼気障害(末梢気道の虚脱;air trapping)は改善します。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫や慢性気管支炎など)のリハビリテーションに応用されています。

(c) 浮力 
★関節の荷重負担を和らげます

 水の中では浮力によって身体が軽くなります。例えば、体重60 kgの人が肩まで湯につかると、10%くらいの重さ、つまり、6 kgくらいになります。従って、腰や膝など関節への負担が軽くなるので、関節疾患でも水中歩行などの運動が容易になります。関節リウマチ変形性関節症のリハビリテーションに応用されています。
温泉の科学3
人体は水中では浮力buoyancyにより体重が軽く感じられます。浮力による免荷で見かけ上の体重は減少します。立位で各水深での免荷の割合は、頚部、剣状突起(みぞおち)、臍部、恥骨部、大腿部で、それぞれ10、30、50-60、80、90%となります。この浮力により関節への負荷を減らすことができます。変形性関節症や関節リウマチのリハビリには有用です。
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(d) 粘性 
★倒れにくく、適度の筋力訓練になります

 浮力により体が軽くなると同時に、水の粘性という性質によって
身体が倒れにくくなります。このように体が軽くなり関節への負担が少なくなり、疼痛が軽減して筋緊張が緩和した状況で、水の粘性に抗して水中歩行することにより、軽い麻痺のある人や関節疾患を持った人でも効果的に筋力回復が期待されます。ただし、転倒すると麻痺のある人は溺れる危険がありますので、水中運動訓練は療法士の監視下で行われます。

                     群馬大学 草津分院
入浴水位と見かけ上の体重(%)
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道案内温泉医学Home (表紙
  温泉医学index目次
   A 温泉研究 Balneology Research Page 1
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                       19, 20, 2122, 23, 24, 2526, 27
     ③ 温泉学会の案内  Page 28, 29, 30,
     ④ 温泉療法医     Page 31
     ⑤ 温泉医学アルバム Page 32
   B 温泉療法 Balneotherapy     Page 33
     ① 温泉療法の実際  Page 34
     ② 安全入浴法     Page 35
     ③ 泉質について    Page 36
     ④ 美人の湯       Page 37
     ⑤ 言い伝え        Page 38
     ⑥ よくある質問     Page 39, 40, 41, 42, 43, 4445, 46, 47, 48,
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 その結果、体液の一部が尿として排出され、脱水傾向になります。体液が少なくなり、みかけの血液量も減少しますので、心臓の負担は軽くなり、体はスッキリします。心不全の治療に応用されています。風呂から出て尿意をもよおすのは日常よく経験することです。
(子供がプールから出てオシッコもらすのも健康な生理現象なのです、決して怒ってはいけません)

★呼吸の換気効率を改善します
 水圧により横隔膜は押し上げられます。このため気道の死腔(ガス交換に関与しない空間)の容積が減少し、(息をうまく吐き出すことができず、肺が過膨張してしまう肺気腫喘息では)換気効率が良くなります
3、温泉の作用と効能 

 どこの温泉にも効能や適応症が掲げられていますが、確かな医学的根拠にもとづいているわけではありません。あなたが温泉を掘り当てて温泉営業するときに、あまり変な効能や適応症を掲げない限りは営業できます。 
 そうです、「効能」は言ったもん勝ちです。そもそも掘り当てたばかりの「未知の」温泉の効能なんか誰がわかりますか? 

 古くからある温泉の効能や適応症などには先人の慧眼もありますが、首を傾げるものも少なくありません。そこで、私達は一歩ずつ温泉の医学作用を検証してきました。 

まず、温泉の医学的作用は、
  1) 物理作用 
    a) 温熱 
    b) 水圧 
    c) 浮力 
    d) 粘性
 
  2) 化学作用 
  3) 生物作用
(=総合的生体調整作用 )
に分類されます。 

A.物理作用 
(a)温熱 
 もっとも一般的な温泉の効用で、泉質の影響は少ないと考えられます。
温熱の作用には 
   1) 筋緊張の緩和(神経γ線維の閾値の調整)、
   2) 靭帯や腱の柔軟化(コラーゲン線維の三重ラセン間結合の緩和)
   3) 静脈還流の増加(HANP、利尿ペプチドの産生増大)
   4) 末梢血管抵抗の低下(前毛細管括約筋の弛緩)
   5) 血管拡張
   6) 慢性疼痛の軽減 
 
などがあります。いずれも経験的にも医学的にも納得できるものです。

★保温効果
 温泉には保温効果があり、家庭の風呂よりも温熱効果は高いと考えられます。温泉に溶けているイオンや化合物が皮膚表面を被覆して、熱放散を妨げて体温を下がりにくくするからです。温泉は出てからもポカポカして湯冷めしないのはこのためです。

★熱さを感じません
 また温泉は真水よりも熱さを感じにくくなっています。おそらく皮膚を被覆しているイオンや化合物によるものと思われますが、同じ温度の真水よりも長い時間熱さを感じないで湯に浸かっていられます。温泉は電子レンジのように表面は焦がさずに体の芯をじっくりと温めていくのです。このため良い湯加減だと思って長湯をすると、命を落とすことになりかねません。ご用心を。

 この温泉の持つ保温作用は一時的な効果ですが、 
   神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺 
   関節のこわばり、うちみ、くじき、冷え症 

には有用です。 

(b) 水圧 
★心臓の負担を軽くします
 入浴したりプールに入るとトイレに行きたくなります。水につかると、水圧によって下半身の血液が、水圧のかかりにくい胸郭や心臓に押しもどされます。すると、心臓は身体に血液(水分)が多すぎると勘違いして、心房性ナトリム利尿ペプチド(HANP)というホルモンを分泌して、腎臓に尿(水分)を出すように指示します(利尿作用)。