温泉の科学6

高温泉浴後の血小板には偽足や空胞といった変化が出現し
凝集、粘着しやすくなっている。
偽足で血管壁に粘着して血栓(血の固まり)ができます。
47℃の高温浴では脳内麻薬のβエンドルフィンの産生が増大し、恍惚感が得られる。
★高温浴の副作用
 良い湯だと思っていると、怖い病気が待っています。 
入浴中の発汗や利尿作用で、水分が失われ脱水状態となり、血液粘度は上昇します。(つまり、血がドロドロになり、流れにくく詰まりやすくなります) 

 また、高温浴では、血小板が活性化され、血管内に血栓ができやすくなります。(つまり、血が固まりやすくなります) 

 さらに、線溶活性(血栓を溶かす機能)が低下していきます。(つまり、血の固まりが溶けにくくなります) 
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★時間湯
 草津温泉では江戸時代から約350年間にわたり、「時間湯」とよばれる高温泉浴が伝えられてきました。47度の温泉に1回3分1日4回、決められた時刻(7、11、15、19時)に集団で入湯する方法です。非常に高温ですが、この高温泉浴が快感で、病みつきになる人もいます。
 その原因は高温により脳内麻薬であるβエンドルフィンが一過性に分泌され、恍惚感が得られるからです。 脳内麻薬は日本人の造語で、英訳はありません。英語ではモルフィネ様物質morphine-like substanceと言います。Endogenous narcoticと表現することもあります。
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 そして、夜間の血圧が低下してきます。 
  (脳への血流が低下して血の流れが悪くなります) 

これで脳梗塞が発症する準備は万端整いました。
以上まとめると、
  高温浴は脳梗塞などの血栓症を引き起こす危険性が高い
と考えられます。 

 このような科学的な実験事実にもとづいて、私たちは家庭での入浴にも適応される安全入浴法を提唱してきました。

《安全入浴法》 
1 家族に知らせる、一人で入らない 
2 浴槽の蓋を活用し、事故防止を図る 
3 更衣室と浴室の温度管理 
4 入浴前後に水分補給 
5 42度以上の湯には入らない 
6 水位は胸まで 
7 朝の入浴は避ける 
8 飲酒後は入浴しない
 

    (温泉療法医研修テキスト 久保田一雄 より)

★朝風呂は危険がいっぱい
 朝の入浴を避ける理由は、心筋梗塞や脳梗塞が早朝にもっとも多く発症するからです。 
 この時間帯(午前4-6時頃)は「自律神経の嵐」とも呼ばれ、体が睡眠状態から覚醒状態に備えるため、血圧、脈拍、体温などが急激に上昇していき、人間にとって最もつらい時間帯です。多くの病気はこの時間帯に発生したり悪化したりします。
 健康な人でもこの時間帯におこされるとーーー、ものすごくつらいです。 

 睡眠中は水を飲まないので水不足(脱水状態)となり、朝方には血液粘度が急激に上昇していき、血栓ができやすくなります。お年寄りでは脳にある「渇中枢」の感度が低下していて、ノドの渇きに鈍感になっていますから、いっそう脱水になりやすくなっています。 
 就寝前などには、水分補給が大切です。就寝前に飲む水は命の水と昔からいわれ、「宝水」と呼ばれています。先人の慧眼には恐れ入ります。
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脳内麻薬 補足説明
 なぜ哺乳類の脳から麻薬用物質が分泌されるのかは不明です。後付けの理屈ですが、哺乳類が耐え難い苦痛や温熱などに暴露されたときに、それを緩和するような物質が脳から分泌されるようになったと?考えられています。
 マラソンランナーなどが過激なレースを終えた後にも、脳内麻薬βエンドルフィンが分泌され恍惚感が一時的に得られ、ランナーズハイrunner's highと言われています。
 ムチで身体を叩いたり、熱く溶けたローソクをたらしたりすると苦痛を感じますが、度を超すと脳内麻薬が分泌されて恍惚感が得られる?らしいです(科学的データはありません)。

 温熱による医学的効果は42℃までで、それ以上は温度を増加しても医学的効果の上乗せはみられません。高温による副作用が出るだけです。医療の発達していなかった昔は熱湯浴などの荒療治に一定の効果はあったようですが、現代学医学では荒療治はお勧めはできません。

 日本人の熱湯好きは、医学的効果ではなく、麻薬中毒い近いものと思います、その延長線上にはSMの世界?があるようです。 

就寝前にコップ1杯の水を飲むと、翌朝の血液粘度の
       急上昇がなくなります(血液がサラサラになります)