① 研究課題:
運動療法の継続がアポトーシスを抑制し脳梗塞後の神経細胞死を軽減する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2020~2022 研究課題番号:20K11191
研究費総額: ¥4,420,000 (直接経費: ¥3,400,000、間接経費: ¥1,020,000)
研究要約(途中報告):
平成26~28年度文科省科研費「課題:運動療法がアポトーシスやアディポカインを介して脳梗塞再発を抑制する機序の解析」により、脳梗塞における運動療法が血管内皮障害(TM, EC)、線溶機能(PA, PIC, DD, TAT)、血小板活性化(βTG, PF-4, PDMP)、炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, IL-2, TNFα, TNFR1, TNFR2)を鎮静化することを示し、運動療法が脳梗塞の二次予防に寄与することを報告した。平成29~31年度文科省科研費「課題:運動療法がサイトカインやアポトーシスを介し脳梗塞後神経細胞死を抑制する機序の解析」では、、脳梗塞における運動療法がアポトーシス(Fas, FasL)、成長因子(BDNF, NGF)、接着分子(P-selectin,L-selectin)を鎮静化することを示し、運動療法が脳梗塞の増悪を抑制することを発表した。本課題はこれらの継続研究課題で、運動療法を継続することが脳梗塞の二次予防および増悪にさらなる効果を示すか否かを解析する。初期治療を終了した亜急性期の脳卒中に従来の理学・作業療法を施行し、運動療法の量(1日当たりの理学・作業療法の時間)とアポトーシス、炎症性サイトカイン、血管内皮障害、成長因子などの指標(Fas、FasL、caspase、IL-1β、IL-6、TNF-α、TNFR、PDGF、NGF、BDNF)の変化量(Δ:後値-前値)を比較検討した。1日当たりの運動療法の時間が多いほど、アポトーシス、炎症性サイトカイン、血管内皮障害、成長因子などの指標が改善してくる傾向がみられた。まだ研究の途中でありデータは揃っていないが、今後は運動のモダリティー、強度(METs)なども検討していきたい。
Keywords:リハビリテーション、脳卒中、神経細胞死、アポトーシス、サイトカイン
② 研究課題:
運動療法がサイトカインやアポトーシスを介し脳梗塞後神経細胞死を抑制する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2017~ 2020 研究課題番号:17K01466
研究費総額 ¥4,550,000 (直接経費: ¥3,500,000、間接経費: ¥1,050,000)
研究要約:
運動療法の継続により、脳卒中においては、1日当たりの運動療法施行時間とΔsFas, ΔL-selectin, ΔP-selectin, Δ IL-6, ΔTNFR2との間に負の相関関係がみられ、ΔIL-1βとの間には正の相関関係がみられた。運動療法時間が多くなることにより、sFas, L-selectin, P-selectin, IL-6, TNFR2の変動幅Δは減少し、即ち、正常範囲へ回復していくと思われる。またIL-1βは増大していくと考えられる。運動療法を継続することにより、炎症性サイトカイン、接着分子、アポトーシスは軽減する傾向を示し、運動療法による脳卒中後の神経細胞死の抑制の可能性が示唆された。本研究課題では、運動療法の継続により、アポトーシス関連抗原やサイトカインに変動がみられたものの、全ての指標の変動を説明できるような一定の結論には至らなかった。しかし、運動療法がアポトーシスや炎症性サイトカインを介して、神経細胞死の抑制に何らかの影響を与えていると考えられた。先の科研費による研究課題では、運動療法が免疫、内分泌、凝固・線溶、血管内皮の機能異常を軽減させる傾向があり、脳梗塞の2次予防に有用であることを報告した。これらを考え合わせると、運動療法は、脳梗塞予防だけでなく脳卒中進展阻止にも寄与していると考えられた。
Keywords:リハビリテーション、脳卒中、神経細胞死、アポトーシス、サイトカイン
③ 研究課題:
運動療法がアポトーシスやアディポカインを介して脳梗塞再発を抑制する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2014~ 2016 研究課題番号:26350582
研究費総額 ¥4,680,000 (直接経費: ¥3,600,000、間接経費: ¥1,080,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系障害などにより脳梗塞へ進展する。さらに炎症性サイトカイン、アポトーシス、接着分子、成長因子などにより、神経細胞死が引き起こされ、非梗塞部の神経細胞にも障害され、病状はさらに増悪する。運動療法がこれらの悪循環を阻止できるかを研究した。本研究では、運動療法の継続が脳卒中におけるアポトーシス、サイトカイン、接着分子、成長因子の指標を減少させることが示された。運動療法の継続は、脳卒中後の神経細胞死の抑制に寄与する可能性が示唆された。
Keywords:運動療法、脳卒中、動脈硬化、血管内皮障害、神経細胞死、炎症性サイトカイン、
アポトーシス、接着分子、脳梗塞、凝固線溶機能、血小板活性化、血管内皮機能、
リハビリテーション、血小板、アディポカイン
④ 研究課題:
メタボリック症候群と脳梗塞における運動療法の抗血栓作用と動脈硬化抑制効果の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2011~2013 研究課題番号:23500607
研究費総額 ¥5,330,000 (直接経費: ¥4,100,000、間接経費: ¥1,230,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系の破綻などにより血栓症へと進展する。そして脳梗塞病変では種々のサイトカインが分泌されアポトーシスが進行し病巣はさらに拡大していく。運動療法がこのような動脈硬化進展と病巣拡大を阻止できないかを研究した。運動療法により脳梗塞患者の血管内皮障害と血小板活性化が軽減され、線溶機能が亢進することを先の研究課題で報告した。本課題では、運動療法が脳梗塞発症後のサイトカインやアポトーシスを軽減することが示唆された。運動療法の継続が血栓形成傾向の抑制だけでなく病巣悪化の阻止にも寄与する可能性が示された。
Keywords:リハビリテーション、脳卒中、動脈硬化、メタボリック症候群、血小板、アポトーシス、
炎症性サイトカイン
⑤ 研究課題:
運動療法がメタボリック症候群の血管内皮、単球、血小板機能と動脈硬化に及ぼす影響
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、准教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2008~2010 研究課題番号:20500462
研究費総額 ¥4,550,000 (直接経費: ¥3,500,000、間接経費: ¥1,050,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系の破綻などにより血栓症へと進展する。運動療法がこのような動脈硬化の進展を阻止できないかを研究した。運動療法を継続することにより脳梗塞患者の血管内皮障害と血小板活性化が軽減され、凝固機能はやや低下し、線溶機能が亢進することが示された。運動療法の継続が血栓形成傾向を抑えて脳梗塞の二次予防に寄与することが示唆された。
Keywords:運動療法、脳梗塞、動脈硬化、メタボリック症候群、血小板活性化、線溶機能、
血管内皮障害、炎症性サイトカイン、リハビリテーション、脳卒中、血小板
⑥ 研究課題:
血小板活性化からみた血管内皮損傷の状態と脳梗塞再発の予測の研究
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、助教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2004~2005 研究課題番号:16500334
研究費総額 ¥3,600,000 (直接経費: ¥3,600,000)
研究要約:
動脈硬化の予防や脳卒中の二次予防に運動療法やリハビリテーションがどこまで関与できるかを研究する目的で、血管内皮機能や血小板活性化、単球活性化と動脈硬化や血栓症との関係を解析した。健康成人よりも高血圧症患者のほうが、高血圧症患者より脳硬塞患者のほうが血小板は活性化している、すなわち動脈硬化の程度に応じて血小板活性化が増大してくることを報告した。また脳卒中や動脈硬化でのインスリン抵抗性の発現因子については既に報告した。一方、温熱負荷により血管内皮機能が障害されたり血小板活性化が引き起こされる可能性があり、高温負荷にて血小板が活性化してくることや血管内皮からの線溶活性が低下する、すなわち血栓が形成されやすくなることは既に報告した。これらの私達の先行研究の結果をふまえて、運動療法が血管内皮機能、血小板活性化、単球活性化に及ぼす影響について研究を進めた。その結果、脳卒中後の血管内皮機能は強く障害されていて、リハビリテーションの経過中に徐々に軽減してくる傾向がみられことが判明した。一方、動脈硬化を基盤としていない脳梗塞では、内皮機能の障害は軽度で脳病巣の発現は遅延することも判明した。インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを有する症例では内皮機能の障害や単球機能の変化がみられる傾向が判明した。即ち、脳卒中では動脈硬化により血小板が活性化し、血管内皮機能が高度に傷害されていることが判明し、運動療法により動脈硬化進展を抑制し脳卒中の二次予防に寄与できる可能性が示唆された。
運動療法により片麻痺や運動機能だけではなく呼吸機能や免疫機能も改善することはすでに報告しているが、本研究によりリハビリテーションが運動機能、呼吸、循環、免疫、内分泌等の機能改善にも関与しているだけでなく、動脈硬化の予防や脳卒中の二次予防にも関与する可能生があることが示唆された。
Keywords:脳梗塞、血小板、血管内皮細胞、インスリン抵抗性、単球、動脈硬化、運動機能、
呼吸機能、温泉療法、水治療
⑦ 研究課題:
血栓症や感染症などの疾患予防も目的にする理学物理療法の新たな展開
研究代表者:久保田 一雄(群馬大学、医学部、助教授)
研究分担者:倉林 均(群馬大学、医学部、講師)
研究種目:基盤研究(C) 研究期間:2000~2001年度 研究課題番号:12832011
配分額 :¥3,900,000 (直接経費: ¥3,900,000)
研究概要:
私たちの病院では脳血管障害患者に1~2ヵ月の通常の理学療法を、慢性閉塞性呼吸器疾患患者には1~2ヵ月の水中での呼吸機能訓練を行っている。これらのリハビリテーションとしての理学療法、呼吸機能訓練の免疫機能に及ぼす影響を検討した。
1. 脳血管障害による片麻痺患者11例に対して2ヵ月間の理学療法を行い、免疫機能に及ぼす影響を検討し、対照患者4例と比較した。理学療法群では対照群に比し、CD4/8比、PHA及びCon Aに対するリンパ球反応性、サプレッサー・インデューサーT細胞(CD4+×CD45R+)、ヘルパー・インデューサーT細胞(CD4+×CD 29+)は有意に上昇した。また、ADCC活性、IL-2レセプターは有意に増加したが、NK細胞活性、血清IL-2・IL-6濃度には差異はなかった。これらの成績から、脳血管障害患者では理学療法を継続すれば、免疫機能が亢進する可能性が示唆された。.
2. 慢性閉塞性呼吸器疾患患者10例に対して2ヵ月間の運動浴(水中での呼吸機能訓練)を行い、免疫機能に及ぼす影響を検討し、対照患者4例と比較した。運動浴群では対照群に比し、CD4+細胞、CD4/8比、PHA及びCon Aに対するリンパ球反応性は有意に増加したが、血清免疫グロブリン濃度には変化がなかった。これらの成績から、慢性閉塞性呼吸器疾患患者でも運動浴を継続すれば、免疫機能が亢進する可能性が示された。
キーワード:リハビリテーション、脳血管障害、理学療法、慢性閉塞性呼吸器疾患、呼吸機能訓練、
サプレッサー・インデューサーT細胞、ヘルパー・インデューサーT細胞、免疫機能、血栓性疾患、
水治療、凝固・線溶系、温浴、tPA、PAI-I、血小板活性化
⑧ 研究課題:
各種固形癌転移に関与する血小板形態と機能に関する研究
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
分類:奨励研究(A) 研究期間:1992~1993 研究課題番号:04772072
研究費総額 ¥900,000
研究要約:
癌の転移における血小板の機能・形態の変化を観察することにより、固形癌の転移に及ぼす血小板の影響を知る目的で、以下の通りの実験を行っている。健康成人、遠隔転移の認められない癌患者及び転移のある癌患者より血小板を採取し、透過電子顕微鏡にて濃染顆粒、特殊顆粒、グリコーゲン粒子、含鉄空胞、開放小管系、暗調小管系、微細小管の変化を観察する。活性化された血小板(微細小管が収縮し細胞小器官が中心に集まったもの、顆粒内容が消失しているもの)の出現率を比較する。次にモノクロナル抗体(GpIIbIIIa、GPIb、フィブリノーゲン、フォン・ウィルブラント因子、GMP140、トロンボスポンジン、βトロンボグロビン)を用いて、血小板内の上記物質の出現・消失を観察する。最後に、血小板ペルオキシダーゼの局在の変化と陽性率、強度の変化を観察する。
血栓性疾患については、血小板表面の突起が増加したり、微細小管が収縮して、特殊顆粒や濃染顆粒の内容が消失しており、血小板が活性化されていることが観察された。また、血小板ペルオキシダーゼも若干減少していた。一方、固形癌の多発転移例についても、同様の傾向が認められない癌患者では、上記の変化はさほど著名ではなく、逆に、健康人よりも血小板の活性化や血小板ペルオキシダーゼ活性の減少してい場合もあり、一定の結論は導けないようであった。現在、免疫電顕の手法により、血小板内の凝固・線溶に関与する物質がどのように変化していくのかを追跡中である。
Keywords:悪性腫瘍、転移、血小板、透過電顕
⑨ 研究課題:
脳梗塞疾患における血小板特殊顆粒内蛋白と血小板形質膜の電子顕微鏡的解析
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
分類:奨励研究(A) 研究期間:1991~1992 研究課題番号:03771849
研究費総額 ¥900,000
研究要約:
血栓性疾患における血小板の機能・形態の変化を観察することにより、脳梗塞に及ぼす血小板の影響を知る目的で、以下の通りの実験を行っている。健康成人、脳梗塞患者及び心筋梗塞患者より血小板を採取して、透過電子顕微鏡にて濃染顆粒、特殊顆粒、グリコーゲン粒子、含鉄空胞、開放小管系、暗調小管系、微細小管の変化を観察する。活性化された(微細線維束が収縮し、細胞小器官が中心に集まったもの、顆粒内容が消失しているもの)血小板の出現率を比較する。次にモノクロナル抗体(GPIb、GpIIbIIIa、フィブリノーゲン、フォン・ウィルブラント因子、GMP140、トロンボスポンジン、βトロンボグロビン)を用いて、血小板内の上記物質の出現・消失を観察する。さらに、鉄顆粒を用いて開放小管系の広がりの変化も観察する。最後に、血小板ペルオキシダーゼの陽性率及びその局在・強弱の変化も観察していく。
血栓性疾患については、血小板表面の突起が増加したり、微細小管が収縮して、特殊顆粒や濃染顆粒の内容が消失しており、血小板が活性化されていることが観察された。また、血小板ペルオキシダーゼは若干、減少している傾向がみられた。一方、固形癌の多発転移例についても、ほぼ同様の傾向がもられ、全体的に血小板が活性化されているものと思われた。転移巣のない癌患者については、上記変化はみられなかった。むしろ、健康成人例よりも血小板の活性化や血小板ペルオキシダーゼの減弱しているものもあり、一定の結論は導くことはできなかた。現在、モノクロナル抗体を用いて、血栓性疾患、固形癌の多発転移例における、血小板内の凝固・線溶物質の変化を追跡中である。
Keywords:脳梗塞、血小板、電子顕微鏡
⑩ 研究課題:
多発性骨髄腫の透過電顕像と薬剤反応性
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
研究種目:奨励(A) 研究期間:1989~1990年 研究課題番号:01770886
交付金額:¥900,000
研究要旨:
目的:多発性骨髄腫の超微細構造と予後との間には深い関連がある。個々の抗癌剤の治療有効性と透過電子顕微鏡所見との関連を解析し、合理的な化学療法選択の手掛かりとしたい。
方法:未治療の多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺液を2%glutaraldehyde固定、1%osmium tetroxide後固定、エタノール脱水、Epon包埋した後、薄切標本をウラン・鉛染色し、透過型電子顕微鏡(JEOL
200CX)で観察した。各症例とも骨髄腫細胞100個について各異常項目の出現頻度を計測した。化学療法終了後、SWOG判定基準により治療効果の評価を行い、各抗癌剤の有効性と電顕所見との関係を検討した。
結果:男25人、女19人。平均年齢61(21~81)歳。Durie&Salmonによる病期分類では、I、II、III期が各々8, 10,
26人で、腎障害(Creatinine>2.0mg/dl)が13人含まれた。IgG, A, D, BJP型は各々20, 15, 1, 8人であった。実施された化学療法はMP
16人、CP 6人、COP 4人、MOP 3人、VENPA 3人、VMPA 3人、VMP 2人、VEPA 2人、VP+MCNU 1人、melphalan単独
1人であった。Melphalan, cyclophosphamide, VCR, ADRを含む化学療法で有効だった例では、幼若な核、核異常構造、鉄沈着したミトコンドリアが有意に少なかった。Cyclophosphamide有効例では幼若な核、細胞質の異常構造、細胞質の配列の乱れ、plasmablastが有意に少なかった。VCR有効例ではnuclear
body、細胞質異常が有意に少なかった。ADR有効例では細胞質配列の乱れが有意に少なかった。
考案:DNA合成障害を機序とする薬剤の有効性が核の幼若性と関連があったことは興味深い。Nuclear body, iron-laden-mitochondria等の異常構造の意義については不明のことが多いが、各抗癌剤の有効性を知る手掛かりとなったことは有用な知見と思われる。
Keywords:多発性骨髄腫、抗癌剤、化学療法、薬剤反応性、超微細構造、電子顕微鏡、
melphalan、cyclophosphamide、nuclear body、iron-laden-mitochondria
在外研究員:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
滞在国・都市:フランス・パリ
研究機関:フランス国立医学衛生研究所、血液分子遺伝学部門
Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale,
Unité de Recherches en Génetique Moleculaire et en Hématologie
研究機関責任者:Janine Breton-Gorius
研究期間:1989~1990年
支給額:¥5,600,000
研究概要:
目的:未分化な白血病細胞が分化誘導因子によりlineageの変化を引き起こすかを解析した。
方法:急性巨核芽球性白血病(AMgL、FAB M7)および分類不能白血病(AUL、FAB M0)より樹立された各細胞株を用いて、G-CSF,
GM-CSF, Epo, IL-6等の分化誘導因子を作用させ、蛍光免疫染色法、免役電子顕微鏡染色、細胞化学染色等により、超微細構造、細胞膜および細胞質内のモノクロナル抗体などの局在と動態を観察し、追跡した。
結果:Epoにより赤芽球に類似した、G-CSFにより骨髄芽球に類似した、IL-6により巨核芽球に類似した超微細構造や免疫学的形質の発現がみられるようになった。一方、分化の定まったAGL,
AMoLの細胞株などにおいては、Epo, G-CSF, IL-6の作用による形態学および免疫学的な変化は乏しかった。
考案:巨核芽球性白血病や分類不能白血病では分化誘導因子によりlineage promiscuityまたは
lineage infideltyが観察される傾向がみられたが、すでに分化の確定した芽球は他のlineageに
移行する可能性は低いことが示唆された。