① 研究課題:
  運動療法の継続がアポトーシスを抑制し脳梗塞後の神経細胞死を軽減する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2020~2022  研究課題番号:20K11191 
研究費総額: ¥4,420,000 (直接経費: ¥3,400,000、間接経費: ¥1,020,000)
研究要約(途中報告):
平成26~28年度文科省科研費「課題:運動療法がアポトーシスやアディポカインを介して脳梗塞再発を抑制する機序の解析」により、脳梗塞における運動療法が血管内皮障害(TM, EC)、線溶機能(PA, PIC, DD, TAT)、血小板活性化(βTG, PF-4, PDMP)、炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, IL-2, TNFα, TNFR1, TNFR2)を鎮静化することを示し、運動療法が脳梗塞の二次予防に寄与することを報告した。平成29~31年度文科省科研費「課題:運動療法がサイトカインやアポトーシスを介し脳梗塞後神経細胞死を抑制する機序の解析」では、、脳梗塞における運動療法がアポトーシス(Fas, FasL)、成長因子(BDNF, NGF)、接着分子(P-selectin,L-selectin)を鎮静化することを示し、運動療法が脳梗塞の増悪を抑制することを発表した。本課題はこれらの継続研究課題で、運動療法を継続することが脳梗塞の二次予防および増悪にさらなる効果を示すか否かを解析する。初期治療を終了した亜急性期の脳卒中に従来の理学・作業療法を施行し、運動療法の量(1日当たりの理学・作業療法の時間)とアポトーシス、炎症性サイトカイン、血管内皮障害、成長因子などの指標(Fas、FasL、caspase、IL-1β、IL-6、TNF-α、TNFR、PDGF、NGF、BDNF)の変化量(Δ:後値-前値)を比較検討した。1日当たりの運動療法の時間が多いほど、アポトーシス、炎症性サイトカイン、血管内皮障害、成長因子などの指標が改善してくる傾向がみられた。まだ研究の途中でありデータは揃っていないが、今後は運動のモダリティー、強度(METs)なども検討していきたい。
  Keywords:リハビリテーション、脳卒中、神経細胞死、アポトーシス、サイトカイン


② 研究課題:
  運動療法がサイトカインやアポトーシスを介し脳梗塞後神経細胞死を抑制する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2017~ 2020  研究課題番号:17K01466 
研究費総額 ¥4,550,000 (直接経費: ¥3,500,000、間接経費: ¥1,050,000)
研究要約:
運動療法の継続により、脳卒中においては、1日当たりの運動療法施行時間とΔsFas, ΔL-selectin, ΔP-selectin, Δ IL-6, ΔTNFR2との間に負の相関関係がみられ、ΔIL-1βとの間には正の相関関係がみられた。運動療法時間が多くなることにより、sFas, L-selectin, P-selectin, IL-6, TNFR2の変動幅Δは減少し、即ち、正常範囲へ回復していくと思われる。またIL-1βは増大していくと考えられる。運動療法を継続することにより、炎症性サイトカイン、接着分子、アポトーシスは軽減する傾向を示し、運動療法による脳卒中後の神経細胞死の抑制の可能性が示唆された。本研究課題では、運動療法の継続により、アポトーシス関連抗原やサイトカインに変動がみられたものの、全ての指標の変動を説明できるような一定の結論には至らなかった。しかし、運動療法がアポトーシスや炎症性サイトカインを介して、神経細胞死の抑制に何らかの影響を与えていると考えられた。先の科研費による研究課題では、運動療法が免疫、内分泌、凝固・線溶、血管内皮の機能異常を軽減させる傾向があり、脳梗塞の2次予防に有用であることを報告した。これらを考え合わせると、運動療法は、脳梗塞予防だけでなく脳卒中進展阻止にも寄与していると考えられた。
  Keywords:リハビリテーション、脳卒中、神経細胞死、アポトーシス、サイトカイン


③ 研究課題:
  運動療法がアポトーシスやアディポカインを介して脳梗塞再発を抑制する機序の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2014~ 2016  研究課題番号:26350582 
研究費総額 ¥4,680,000 (直接経費: ¥3,600,000、間接経費: ¥1,080,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系障害などにより脳梗塞へ進展する。さらに炎症性サイトカイン、アポトーシス、接着分子、成長因子などにより、神経細胞死が引き起こされ、非梗塞部の神経細胞にも障害され、病状はさらに増悪する。運動療法がこれらの悪循環を阻止できるかを研究した。本研究では、運動療法の継続が脳卒中におけるアポトーシス、サイトカイン、接着分子、成長因子の指標を減少させることが示された。運動療法の継続は、脳卒中後の神経細胞死の抑制に寄与する可能性が示唆された。
  Keywords:運動療法、脳卒中、動脈硬化、血管内皮障害、神経細胞死、炎症性サイトカイン、
     アポトーシス、接着分子、脳梗塞、凝固線溶機能、血小板活性化、血管内皮機能、
     リハビリテーション、血小板、アディポカイン


④ 研究課題:
  メタボリック症候群と脳梗塞における運動療法の抗血栓作用と動脈硬化抑制効果の解析
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2011~2013  研究課題番号:23500607 
研究費総額 ¥5,330,000 (直接経費: ¥4,100,000、間接経費: ¥1,230,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系の破綻などにより血栓症へと進展する。そして脳梗塞病変では種々のサイトカインが分泌されアポトーシスが進行し病巣はさらに拡大していく。運動療法がこのような動脈硬化進展と病巣拡大を阻止できないかを研究した。運動療法により脳梗塞患者の血管内皮障害と血小板活性化が軽減され、線溶機能が亢進することを先の研究課題で報告した。本課題では、運動療法が脳梗塞発症後のサイトカインやアポトーシスを軽減することが示唆された。運動療法の継続が血栓形成傾向の抑制だけでなく病巣悪化の阻止にも寄与する可能性が示された。
  Keywords:リハビリテーション、脳卒中、動脈硬化、メタボリック症候群、血小板、アポトーシス、
     炎症性サイトカイン


⑤ 研究課題:
  運動療法がメタボリック症候群の血管内皮、単球、血小板機能と動脈硬化に及ぼす影響
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、准教授)
分類:基盤研究(C)  研究期間:2008~2010  研究課題番号:20500462 
研究費総額  ¥4,550,000 (直接経費: ¥3,500,000、間接経費: ¥1,050,000)
研究要約:
動脈硬化は血小板活性化、血管内皮機能障害、凝固・線溶系の破綻などにより血栓症へと進展する。運動療法がこのような動脈硬化の進展を阻止できないかを研究した。運動療法を継続することにより脳梗塞患者の血管内皮障害と血小板活性化が軽減され、凝固機能はやや低下し、線溶機能が亢進することが示された。運動療法の継続が血栓形成傾向を抑えて脳梗塞の二次予防に寄与することが示唆された。
  Keywords:運動療法、脳梗塞、動脈硬化、メタボリック症候群、血小板活性化、線溶機能、
     血管内皮障害、炎症性サイトカイン、リハビリテーション、脳卒中、血小板


⑥ 研究課題:
  血小板活性化からみた血管内皮損傷の状態と脳梗塞再発の予測の研究
研究代表者:倉林 均(埼玉医科大学、医学部、助教授)
分類:基盤研究(C) 研究期間:2004~2005  研究課題番号:16500334 
研究費総額 ¥3,600,000 (直接経費: ¥3,600,000)
研究要約:
動脈硬化の予防や脳卒中の二次予防に運動療法やリハビリテーションがどこまで関与できるかを研究する目的で、血管内皮機能や血小板活性化、単球活性化と動脈硬化や血栓症との関係を解析した。健康成人よりも高血圧症患者のほうが、高血圧症患者より脳硬塞患者のほうが血小板は活性化している、すなわち動脈硬化の程度に応じて血小板活性化が増大してくることを報告した。また脳卒中や動脈硬化でのインスリン抵抗性の発現因子については既に報告した。一方、温熱負荷により血管内皮機能が障害されたり血小板活性化が引き起こされる可能性があり、高温負荷にて血小板が活性化してくることや血管内皮からの線溶活性が低下する、すなわち血栓が形成されやすくなることは既に報告した。これらの私達の先行研究の結果をふまえて、運動療法が血管内皮機能、血小板活性化、単球活性化に及ぼす影響について研究を進めた。その結果、脳卒中後の血管内皮機能は強く障害されていて、リハビリテーションの経過中に徐々に軽減してくる傾向がみられことが判明した。一方、動脈硬化を基盤としていない脳梗塞では、内皮機能の障害は軽度で脳病巣の発現は遅延することも判明した。インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを有する症例では内皮機能の障害や単球機能の変化がみられる傾向が判明した。即ち、脳卒中では動脈硬化により血小板が活性化し、血管内皮機能が高度に傷害されていることが判明し、運動療法により動脈硬化進展を抑制し脳卒中の二次予防に寄与できる可能性が示唆された。
運動療法により片麻痺や運動機能だけではなく呼吸機能や免疫機能も改善することはすでに報告しているが、本研究によりリハビリテーションが運動機能、呼吸、循環、免疫、内分泌等の機能改善にも関与しているだけでなく、動脈硬化の予防や脳卒中の二次予防にも関与する可能生があることが示唆された。
  Keywords:脳梗塞、血小板、血管内皮細胞、インスリン抵抗性、単球、動脈硬化、運動機能、
     呼吸機能、温泉療法、水治療


⑦ 研究課題:
  血栓症や感染症などの疾患予防も目的にする理学物理療法の新たな展開
研究代表者:久保田 一雄(群馬大学、医学部、助教授)
研究分担者:倉林 均(群馬大学、医学部、講師)
研究種目:基盤研究(C)  研究期間:2000~2001年度  研究課題番号:12832011
配分額 :¥3,900,000 (直接経費: ¥3,900,000)
研究概要:
私たちの病院では脳血管障害患者に1~2ヵ月の通常の理学療法を、慢性閉塞性呼吸器疾患患者には1~2ヵ月の水中での呼吸機能訓練を行っている。これらのリハビリテーションとしての理学療法、呼吸機能訓練の免疫機能に及ぼす影響を検討した。
1. 脳血管障害による片麻痺患者11例に対して2ヵ月間の理学療法を行い、免疫機能に及ぼす影響を検討し、対照患者4例と比較した。理学療法群では対照群に比し、CD4/8比、PHA及びCon Aに対するリンパ球反応性、サプレッサー・インデューサーT細胞(CD4+×CD45R+)、ヘルパー・インデューサーT細胞(CD4+×CD 29+)は有意に上昇した。また、ADCC活性、IL-2レセプターは有意に増加したが、NK細胞活性、血清IL-2・IL-6濃度には差異はなかった。これらの成績から、脳血管障害患者では理学療法を継続すれば、免疫機能が亢進する可能性が示唆された。.
2. 慢性閉塞性呼吸器疾患患者10例に対して2ヵ月間の運動浴(水中での呼吸機能訓練)を行い、免疫機能に及ぼす影響を検討し、対照患者4例と比較した。運動浴群では対照群に比し、CD4+細胞、CD4/8比、PHA及びCon Aに対するリンパ球反応性は有意に増加したが、血清免疫グロブリン濃度には変化がなかった。これらの成績から、慢性閉塞性呼吸器疾患患者でも運動浴を継続すれば、免疫機能が亢進する可能性が示された。
 キーワード:リハビリテーション、脳血管障害、理学療法、慢性閉塞性呼吸器疾患、呼吸機能訓練、
   サプレッサー・インデューサーT細胞、ヘルパー・インデューサーT細胞、免疫機能、血栓性疾患、
   水治療、凝固・線溶系、温浴、tPA、PAI-I、血小板活性化


⑧ 研究課題:
  各種固形癌転移に関与する血小板形態と機能に関する研究
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
分類:奨励研究(A)  研究期間:1992~1993  研究課題番号:04772072
研究費総額  ¥900,000
研究要約:
癌の転移における血小板の機能・形態の変化を観察することにより、固形癌の転移に及ぼす血小板の影響を知る目的で、以下の通りの実験を行っている。健康成人、遠隔転移の認められない癌患者及び転移のある癌患者より血小板を採取し、透過電子顕微鏡にて濃染顆粒、特殊顆粒、グリコーゲン粒子、含鉄空胞、開放小管系、暗調小管系、微細小管の変化を観察する。活性化された血小板(微細小管が収縮し細胞小器官が中心に集まったもの、顆粒内容が消失しているもの)の出現率を比較する。次にモノクロナル抗体(GpIIbIIIa、GPIb、フィブリノーゲン、フォン・ウィルブラント因子、GMP140、トロンボスポンジン、βトロンボグロビン)を用いて、血小板内の上記物質の出現・消失を観察する。最後に、血小板ペルオキシダーゼの局在の変化と陽性率、強度の変化を観察する。
血栓性疾患については、血小板表面の突起が増加したり、微細小管が収縮して、特殊顆粒や濃染顆粒の内容が消失しており、血小板が活性化されていることが観察された。また、血小板ペルオキシダーゼも若干減少していた。一方、固形癌の多発転移例についても、同様の傾向が認められない癌患者では、上記の変化はさほど著名ではなく、逆に、健康人よりも血小板の活性化や血小板ペルオキシダーゼ活性の減少してい場合もあり、一定の結論は導けないようであった。現在、免疫電顕の手法により、血小板内の凝固・線溶に関与する物質がどのように変化していくのかを追跡中である。
  Keywords:悪性腫瘍、転移、血小板、透過電顕


⑨ 研究課題:
  脳梗塞疾患における血小板特殊顆粒内蛋白と血小板形質膜の電子顕微鏡的解析
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
分類:奨励研究(A)  研究期間:1991~1992  研究課題番号:03771849
研究費総額  ¥900,000
研究要約:
血栓性疾患における血小板の機能・形態の変化を観察することにより、脳梗塞に及ぼす血小板の影響を知る目的で、以下の通りの実験を行っている。健康成人、脳梗塞患者及び心筋梗塞患者より血小板を採取して、透過電子顕微鏡にて濃染顆粒、特殊顆粒、グリコーゲン粒子、含鉄空胞、開放小管系、暗調小管系、微細小管の変化を観察する。活性化された(微細線維束が収縮し、細胞小器官が中心に集まったもの、顆粒内容が消失しているもの)血小板の出現率を比較する。次にモノクロナル抗体(GPIb、GpIIbIIIa、フィブリノーゲン、フォン・ウィルブラント因子、GMP140、トロンボスポンジン、βトロンボグロビン)を用いて、血小板内の上記物質の出現・消失を観察する。さらに、鉄顆粒を用いて開放小管系の広がりの変化も観察する。最後に、血小板ペルオキシダーゼの陽性率及びその局在・強弱の変化も観察していく。
血栓性疾患については、血小板表面の突起が増加したり、微細小管が収縮して、特殊顆粒や濃染顆粒の内容が消失しており、血小板が活性化されていることが観察された。また、血小板ペルオキシダーゼは若干、減少している傾向がみられた。一方、固形癌の多発転移例についても、ほぼ同様の傾向がもられ、全体的に血小板が活性化されているものと思われた。転移巣のない癌患者については、上記変化はみられなかった。むしろ、健康成人例よりも血小板の活性化や血小板ペルオキシダーゼの減弱しているものもあり、一定の結論は導くことはできなかた。現在、モノクロナル抗体を用いて、血栓性疾患、固形癌の多発転移例における、血小板内の凝固・線溶物質の変化を追跡中である。
  Keywords:脳梗塞、血小板、電子顕微鏡


⑩ 研究課題:
  多発性骨髄腫の透過電顕像と薬剤反応性
研究代表者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
研究種目:奨励(A) 研究期間:1989~1990年  研究課題番号:01770886
交付金額:¥900,000
研究要旨:
目的:多発性骨髄腫の超微細構造と予後との間には深い関連がある。個々の抗癌剤の治療有効性と透過電子顕微鏡所見との関連を解析し、合理的な化学療法選択の手掛かりとしたい。
方法:未治療の多発性骨髄腫患者の骨髄穿刺液を2%glutaraldehyde固定、1%osmium tetroxide後固定、エタノール脱水、Epon包埋した後、薄切標本をウラン・鉛染色し、透過型電子顕微鏡(JEOL 200CX)で観察した。各症例とも骨髄腫細胞100個について各異常項目の出現頻度を計測した。化学療法終了後、SWOG判定基準により治療効果の評価を行い、各抗癌剤の有効性と電顕所見との関係を検討した。
結果:男25人、女19人。平均年齢61(21~81)歳。Durie&Salmonによる病期分類では、I、II、III期が各々8, 10, 26人で、腎障害(Creatinine>2.0mg/dl)が13人含まれた。IgG, A, D, BJP型は各々20, 15, 1, 8人であった。実施された化学療法はMP 16人、CP 6人、COP 4人、MOP 3人、VENPA 3人、VMPA 3人、VMP 2人、VEPA 2人、VP+MCNU 1人、melphalan単独 1人であった。Melphalan, cyclophosphamide, VCR, ADRを含む化学療法で有効だった例では、幼若な核、核異常構造、鉄沈着したミトコンドリアが有意に少なかった。Cyclophosphamide有効例では幼若な核、細胞質の異常構造、細胞質の配列の乱れ、plasmablastが有意に少なかった。VCR有効例ではnuclear body、細胞質異常が有意に少なかった。ADR有効例では細胞質配列の乱れが有意に少なかった。
考案:DNA合成障害を機序とする薬剤の有効性が核の幼若性と関連があったことは興味深い。Nuclear body, iron-laden-mitochondria等の異常構造の意義については不明のことが多いが、各抗癌剤の有効性を知る手掛かりとなったことは有用な知見と思われる。
 Keywords:多発性骨髄腫、抗癌剤、化学療法、薬剤反応性、超微細構造、電子顕微鏡、
    melphalan、cyclophosphamide、nuclear body、iron-laden-mitochondria

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温泉医学 index

編集中
C.環境省委託事業
編集中
厚生労働科学研究費補助金
がん予防等健康科学総合研究事業


研究課題: 銭湯における温熱効果の予防医学的意義に関する研究
課題番号:H15-がん予防-097
研究年度:2003~2004年
主任研究者:阿岸祐幸(北海道大学、医学部、教授)

<総括研究報告書>

III-(2) 呼吸機能
分担研究者:倉林 均(群馬大学医学部附属病院草津分院リハビリテーション部)
研究要旨
呼吸器疾患には換気、死腔、ガス交換、弾性、横隔膜などの物理的要素が大きく関与するため物理療法の役割は大きい。慢性閉塞性呼吸器疾患では肺の過膨張により横隔膜は平低化し換気効率が低下している。水浴の静水圧により腹腔内圧増加、横隔膜挙上、死腔減少、静脈還流増大、心拍出量増加、肺血流増加となり、換気効率は改善する。水中呼気法により気道内圧は上昇して末梢気道虚脱が抑制される。温熱により末梢血管は拡張し毛細血管に短絡路が形成され心拍出量は増加しガス交換率は改善する。浴室蒸気により喀痰粘調度は低下し気道粘膜は湿潤化される。銭湯の利点は集団の中での訓練で、同じ病気を持つ人どうしのピアカウンセリングが自然発生し、日常生活への動機付け、健常人との交流がうまれ、地域社会の中で生きていく強い動機付けと意欲が育まれていく。日本の銭湯文化は疾病や障害の療養やリハビリに極めて有用な方法であると結論できる。

III-(9) 血液線溶・凝固系
分担研究者:倉林 均(群馬大学医学部附属病院草津分院リハビリテーション部)
研究要旨
銭湯や温泉は日本の伝統文化であるが、入浴死亡事故は少なくはなく、その対策は急務である。入浴事故の原因は脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症が最も多く、また軽い発作でも溺死の危険がある。強行旅程や飲酒による脱水、早朝の血液粘度上昇(血液濃縮)、静水圧によ利尿性ペプチドHANP増加で脱水は進行し血栓形成の危険が増大する。高温浴で血小板は活性化し線溶機能は低下し血栓形成の危険は高まる。超高温浴では脳内麻薬(βエンドルフィン)分泌により限度を越えて入浴する。動脈硬化症では血小板活性化が著しく入浴による血栓症誘発の危険は高い。以上の結果から安全入浴法を提唱する。1. 湯温は42℃以下、2. 長湯はしない、3. 入浴水位は胸まで、4. 入浴後は水分補給を、5. 飲酒後は入浴しない、6. 朝風呂は厳禁、7. 浴室と更衣室の温度差は少なく、8. 独り入浴しない、または家族に声をかけてから入浴する

XII-(2) 呼吸器疾患(喘息、閉塞性呼吸器疾患)
分担研究者:倉林 均(群馬大学医学部附属病院草津分院リハビリテーション部)
研究要旨
私達は銭湯や家庭風呂でも行える慢性閉塞性呼吸器疾患の水治療法を開発した。軽い準備運動の後、運動浴槽(家庭浴槽でも可)に肩まで浸かる。立位で鼻から深く息を吸い込み、腰を軽く曲げて口を水面下2-3cmに沈め、ゆっくりと水中に口から息を吐き出していく呼吸法を繰り返す。慢性気管支喘息、慢性肺気腫、慢性気管支炎に子の呼吸訓練を1回20分間、週5日、2月間行った。肺活量(%VC)、努力肺活量(%FVC)、は増加の傾向を示し、一秒率(FEV1.0%)は有意に増加した。動脈血酸素分圧(PaO2)は増加傾向を示し、二酸化炭素分圧(PaOC2)は減少した。機序は静水圧による腹腔内圧増加、横隔膜挙上、死腔減少、静脈還流増加、心拍出量増大、肺血流増大、水中呼気法による気道内圧増加、末梢気道虚脱抑制である。本訓練は慢性拘束性呼吸器疾患にも有効で、長く継続できる呼吸理学療法といえる。
<公的研究資金による研究成果の報告>
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温泉医学Home

B.厚生労働省科学研究費
A.文部科学省科学研究費

 
  フランス国立医学衛生研究所 INSERM

在外研究員:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)
滞在国・都市:フランス・パリ
研究機関:フランス国立医学衛生研究所、血液分子遺伝学部門
 Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale,
 Unité de Recherches en Génetique Moleculaire et en Hématologie
研究機関責任者:Janine Breton-Gorius
研究期間:1989~1990年
支給額:¥5,600,000
研究概要:
目的:未分化な白血病細胞が分化誘導因子によりlineageの変化を引き起こすかを解析した。
方法:急性巨核芽球性白血病(AMgL、FAB M7)および分類不能白血病(AUL、FAB M0)より樹立された各細胞株を用いて、G-CSF, GM-CSF, Epo, IL-6等の分化誘導因子を作用させ、蛍光免疫染色法、免役電子顕微鏡染色、細胞化学染色等により、超微細構造、細胞膜および細胞質内のモノクロナル抗体などの局在と動態を観察し、追跡した。
結果:Epoにより赤芽球に類似した、G-CSFにより骨髄芽球に類似した、IL-6により巨核芽球に類似した超微細構造や免疫学的形質の発現がみられるようになった。一方、分化の定まったAGL, AMoLの細胞株などにおいては、Epo, G-CSF, IL-6の作用による形態学および免疫学的な変化は乏しかった。
考案:巨核芽球性白血病や分類不能白血病では分化誘導因子によりlineage promiscuityまたは
lineage infideltyが観察される傾向がみられたが、すでに分化の確定した芽球は他のlineageに
移行する可能性は低いことが示唆された。
D.文部省長期在外研究員
環境省委託業務報告書

平成18年度 温泉利用に関する掲示内容等についての医学的検討調査

研究代表者:伊藤 幸治(東京大学、医学部、教授)
研究期間:2007~2008年

II. 温泉水飲用における調査研究
1. 飲用の適応症・禁忌症
5) 飲泉の適応症・禁忌症(まとめ)
分担研究者:倉林 均(埼玉医科大学リハビリテーション医学)、他
研究要旨:
 今回、温泉の飲泉における禁忌症・適応症の適切な根拠を求めるために、科学的研究を中心に詳細に調査した。飲泉の利用基準に関わる温泉成分の薬理学的検討、国内外からの科学的根拠に対する文献の検討、飲泉の盛んな欧米での科学的な作用機序にかかわる文献調査から、種々の知見が得られた。これらの調査結果から多様な成分をもつ温泉の適切な飲泉の指針を求めるために、さらに深く掘り下げた検討が必要で、今後より一層の検討を進める必要がある。
 温泉に含まれる成分の薬理学的な飲泉の効果については、今回検討した内容については科学的根拠として差し支えないものと考えるが、大島良雄先生による「温泉療養」に飲泉の場合も温泉の非特異的効果を重視しており、また温水を飲用する効果(たとえば胃粘膜血流の増加など)もあって単純に薬物効果だけで飲泉効果を論ずることはできない可能性がある。温泉療法としての飲泉は、一定期間温泉地に滞在し、医師の指導に従って行うことが必要になる。
 実際の計算例でもあったように、薬理学的効果を得ようとすると、塩原温泉では2L、四万温泉は飲泉の効果を期待して飲むことはできなことになる。現在、塩原温泉や四万温泉などの利用客の多くは、療養効果よりも「飲める」というこれまでにの習慣からいわゆる「遊び飲み」が行われていると考え、胃腸に効果がある温泉として、飲用も歴史的に定着している事実がある。また、単純温泉においても原稿では飲用の適応症はないが、温泉場の活性化もあり利用客が楽しんでいることも確かである。
 したがって、飲泉の効果を薬理学的に期待して飲む場合は、飲用量が多くなることがあり、含有成分(飲用基準)の方から制約を受けるにつながり、多量の飲用が問題を生じかねないことを利用者に理解していただくことになると思われる。
 環境省が求めている適応症については、国内の温泉場において医師が直接関与しない一般の温泉利用施設のなかでの禁忌症・適応症とそのであると考えられることから、再度、禁忌症・適応症の掲示モデルについては考慮・再検討しなければならないと考えている。

3.飲泉についての現地調査
3) 四万温泉
分担研究者:倉林 均(埼玉医科大学リハビリテーション医学)、他
研究要旨:
 群馬県四万温泉における飲泉の実態調査をアンケート方式で行った。
 飲泉の許可を受けている異なるタイプの3飲泉所を選んだ。清流の湯飲泉所(日帰り温泉施設内にある飲泉所)、塩の湯飲泉所(街角の飲泉所)、日向見荘飲泉所(宿泊施設内にある室内飲泉所)の3箇所である。線質は前2者がナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉で、後者がカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉である。液性(pH値)は7.4、7.6、8.7と中性から弱アルカリ性、無色透明で苦味も少なく飲みやすい温泉水である。
 飲泉所の清掃は行き届いていたが、共同の柄杓やガラスコップを使用している点は改善の余地がある。使い捨ての紙コップなどが望ましい。
 飲泉所で実際に飲泉した90名の利用者からアンケート調査の協力が得られた。年齢は若年層から老年層まで幅広く、男女比もほぼ同等であった。ほとんどの利用者がその場限りの飲泉であり、常用者は3名に過ぎなかった。
 いずれの飲泉所にも、温泉水の成分表や飲泉に関する注意事項が掲載されていたが、医師の指導を受けて飲泉している利用者は1人もいなかった。
 本邦ににおいては、飲泉の効果はほとんど研究されていないので、今後の検討が必要である。しかかしながら、現時点では、飲泉の安全性や衛生面に関する対策が急務であると考えられた。



平成21年度 温泉利用に関する掲示内容等についての医学的検討調査

研究代表者:猪熊 茂子
研究期間:2010~2011年

III. 温泉の多様化する温泉利用形態の効果と禁忌、および注意事項
1. 温泉足湯施設の管理、掲示事項に関するアンケート調査
分担研究者:倉林 均(埼玉医科大学リハビリテーション医学)、他
研究要旨:
 設置母体の差による偏りが出ないように、都道府県や市町村自治体設置のもの、旅館やホテル等の民間の施設、温泉、観光協会設置のもの、駅や空港に設置されたもの、病医院や福祉施設のもの等、出来るだけ全国多種の470施設にアンケートを送付した。有効回答数167通について分析した結果の概要は次のようなものであった。
 回答のあった146施設の設置母体は、(1)都道府県、自治体64施設(44%) (2)民間の温泉旅館、ホテル、民宿等38施設(26%) (3)医療・福祉施設11施設(7%) (4)観光協会、農協等8施設(5%) (5)その他25施設(17%) であった。
1) 都道府県や地方自治体、観光協会等のものは、足湯推量3トン以上の大型施設や1日100人以上の利用者の施設が多く、民間施設に比べてその規模も大きい傾向にある。2) 温泉足浴の効果は、設置者、利用者とも癒し、安らぎ、リラックス効果、結構改善、保温効果、疲労回復、
集客効果等のプラス評価が大半で、危険やクレームは少なかった。3) 足湯の温度は夏場、冬場とも適温の「40-42度が70%」であったが、一部に45-50度の回答もあり、自由記載では上限温度の規制が必要との意見もあった。4) 清掃は規模や利用者による差は少なく、毎日清掃は68%、週1-2回の清掃が20%であった。清掃の方法もブラシ、潜在による清掃が84%、消毒液使用は16%のみであった。また浴水の細菌検査は、検査ありは35%のみで、検査なしが65%で、今後の検査予定ありも15
施設に留まった。
 この結果からは、近年のレジオネラや白癬菌の報道に不安はあるが、高度のろ過、殺菌、消毒の設備は経営的に難しいとの回答が多かった。特に民間の温泉旅館やホテル、民宿の回答率が高くなっており、足湯がより一般化したこととレジオネラ感染報道への関心が大きいと思われる。
公害健康被害補償予防協会(環境省)


公害健康被害補償予防協会委託業務報告書 1993年

慢性閉塞性呼吸器疾患の温泉療法の効果に関する研究 1993年

研究代表者:岡崎勝朗(岡山大学、医学部、教授)
研究期間:1993~1994年
研究課題:気管支喘息患者に対する温泉療法の効果に関する研究 第三報
分担研究者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)、他
研究要旨
 慢性閉塞性呼吸器疾患とくにそのうち、気管支喘息患者に対する温泉療法の臨床効果を明らかにするとともに、とくにその発現機序に関連して温泉自体の免疫学的、内分泌・自律神経学的な直接、関節的な作用、そして温泉を含む環境因子のこれら患者における精神・心理面に及ぼす作用の二つの面から温泉療法の治療効果を前回に引き続き検討した。対象は男4例、女7の計11(22~78歳に分布、平均64.7±17.8歳)で、前例入院後、温泉を用いた水中呼気法(30分/1回、1-2回/日、5日/週)を1ヶ月行われたが、えられた成績は下記のごとくである。
1) 換気機能 温泉療法後9例(81.1%)では自覚症状の改善がみられ、また%FVCは10例(90.9%)、FEV1.0%は9例(81.8%)にその改善がみられた。また両換気機能の平均値は療後有意の増加を示した。
2) 内分泌・自律神経 アドレナリン(adr)、ノルアドレナリン(nor)値は温泉療法後には、前者では不変あるいは減少が9例(81.1%)、同じく後者では7例(63.6%)、両値とも平均値に有意の差はみられなかった。なおnor/adr比は9例(81.8%)で増加、2例で低下した。温泉療法前の早朝空腹時のコーチゾル(cor)は9例で正常範囲内、2例では異常低下を示した。療法後には異常低下例を含む9例(81.8%)でその増加がみられたが、平均値ではとくに有意の低下はなかった。療法後ACTHは6例で低下(54.5%)し、cort/ACTH比は療法後に7例(63.65)で増加、2例で低下、2例で不変だった。
3) 免疫系 サブスタンス-P(S-P)、IgE値には温泉療法前後でとくに一定の変化はみられなかった。IgGは温泉療法後9例(81.8%)で減少し、平均値も有意の減少(P<0.05)がみられた。IgAおよびMには一定の変化はみられなかった。CD4/8比は温泉療法前1.07~4.35に分布したが、一定の傾向はなかった。療法後は9例(81.8%)で低下したが、平均値では有意の低下はなかった。一方、活性化B細胞(CD23)は療法後8例(72.7%)で減少し、平均値も有意の減少(P<0.05)を示した。遅延型過敏反応、各種アレルゲンに対する抗原特異的抗体価にも、温泉療法前後でとくに一定の変化は観察されなかった。
4) 心理テスト CMI、SDS、CAIおよびSD法による心理テストが温泉療法開始前および終了後1ヶ月以内に行われた。CMI法による自覚症状調査からは入院時に比較して増加し、SDS法でも同じく軽度改善傾向がみられた。CAI法による成績からは温泉療法による入院治療の有用性が示唆され、SD法による成績からは、温泉療法による改善は軽度にとどまった。


公害健康被害補償予防協会委託業務報告書 1989年

慢性閉塞性呼吸器疾患の温泉療法に関する研究 報告書 1989年
研究代表者:岡崎勝朗(岡山大学、医学部、教授)
研究期間:1989~1990年
研究課題喘息患者換気能、末梢血リンパ球におよぼす長期温泉療法の効果について
分担研究者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)、他
研究要旨
 7例の喘息患者で12から22ヶ月にわたる長期温泉療法を行い、現在までの換気機能およびリンパ球機能の推移につき検討して次のごとき成績がえられた。
1) 自覚的には温泉療法中は著名な改善、とくに発作時の呼吸困難の軽減が前例でみられた。換気機能もFVCおよびFEV1.0でいずれも経過にともなって緩徐ながら改善する傾向がみられた。対象中一時温泉療法を中断した3例では症状の悪化、換気機能の一時的低下が観察された。
2) 温泉療法中に、一回運動浴前後における換気機能の変化を検討したが、一定の傾向はみられなかった。
3) マイトジェン反応は経過とともに正常範囲内で低下する傾向がみられた。一方、OKT4/8比は正常範囲内で同様の軽度低下傾向を示した。


公害健康被害補償予防協会委託業務報告書 1988年

慢性閉塞性呼吸器疾患の温泉療法に関する研究 1998年

研究代表者:岡崎勝朗(岡山大学、医学部、教授)
研究期間:1988~1989年
研究課題: 喘息患者の運動浴の治療効果に及ぼす草津温泉の影響
分担研究者:倉林 均(群馬大学、医学部、助手)、他
研究要旨
 我々は気管支喘息患者3例について、我々が独自に設定した温泉を用いる運動浴療法を1ヶ月にわたりこれら患者に行った。えられた成績は以下のごとくであった。
1) 換気機能の改善のための運動療法
 鼻口まで水面下に沈めて徐々に息を吐かせる呼吸を10分間繰り返させる運動療法は可能であり、1日2ないし3回、週4回行わせた。1ヶ月の治療で前例が10分間25ないし30回の呼吸数が20回前後にまで耐えられるようになった。
2) 換気機能の温泉治療による変化
 努力肺活量および一秒量の著名な改善がみられた。一秒率は非勝量の増加がより著しく、2例ではむしろ低下した。一秒率の改善率は第2例以外では30%以上を示した。
3) 淡水浴前後の血漿コーチゾルの変化
 42度C10分間の淡水浴後の血漿コーチゾルは一秒量の改善の良かった第一例では一過性のコーチゾル上昇を示す正常に近いパターンがみられたが、一秒量の改善の悪かった第二例ではそのパターンは正常とは異なり非定型であった。しかし治療後、若干正常パターンに近い反応を示すようになった。
 おわりに少数例では結論は出せないが、以上の成績から気管支喘息患者の温泉治療効果の機序につき若干の考察を加えた。


編集中
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